後遺障害12級13号は、後遺症が「局部にがん固な神経症状を残すもの」である場合に認定されます。
具体的には、身体のある部分に他覚的所見が認められる神経症状のことです。
ほかにも、似た症状で認定される可能性のある後遺障害等級として「12級6号」や「12級7号」、「14級9号」があります。
どの後遺障害等級が認定されるかによって、慰謝料や逸失利益の金額が大きく変わることがあります。
そのため、それぞれの後遺障害等級の違いを知っておきましょう。
このコラムでは、後遺障害12級13号の認定基準や具体的な症状などについて解説します。
「後遺障害」とは?後遺症との違い
後遺症とは、ケガや病気を治療したあと、医学的にこれ以上回復できないと判断された状態で残った症状のことです。
ただし、後遺症があれば必ず「後遺障害」として認定されるわけではありません。
後遺症があっても後遺障害等級が認定されなければ、後遺症が残ったことについて慰謝料や逸失利益を請求することは難しいでしょう。
後遺障害等級の認定を受けるためには、自賠責保険の根拠法である自動車損害賠償保障法(自賠法)が定める基準(症状)に当てはまる必要があります。
後遺障害の等級は、後遺症の症状の重さに従い、1~14級まであり、どの等級に認定されるかによって、請求できる慰謝料などの金額が変わってきます。
後遺障害12級13号の認定基準・症状
ここでは、後遺障害12級13号の認定基準と、12級13号に認定される可能性のある後遺症について解説します。
(1)後遺障害12級13号の認定基準
後遺障害12級13号は、「局部にがん固な神経症状を残すもの」です。
具体的には、レントゲンやMRIなどで原因がわかる痛みやしびれ、めまいなどがあるといった、身体のある部分に他覚的所見(※)が認められる神経症状のことです。
※医師などの第三者がレントゲンやMRIなどによって、症状の存在を客観的に認識できること。
(2)後遺障害12級13号の可能性があるケガ(後遺症)
後遺障害12級13号の可能性があるケガ(後遺症)には、たとえば次のものがあります。
【後遺障害12級13号に認定される可能性のあるケガ(後遺症)の例】
1.むち打ち症
2.椎間板ヘルニア
3.骨折
4.靭帯損傷
5.TFCC損傷
それぞれにどういった症状があるのか、説明します。
(2-1)むち打ち症
「むち打ち症」とは、主に自動車との交通事故を原因として首が鞭のようにしなったことによって、頸部の筋肉、靭帯、椎間板などの軟部組織や骨組織が損傷しておこる症状のことです。
前述の通り、レントゲンやMRIなどによる画像所見が必要であり、このような所見が見られないむち打ちは12級の認定は基本的にありません。
【むち打ち症の症状】
・頭・首・肩・腕・背中などの痛み
・めまい、しびれ
・知覚異常
・倦怠感、吐き気 など
(2-2)椎間板ヘルニア
「椎間板ヘルニア」とは、骨と骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板が変性して飛び出してしまったことにより、神経を圧迫してさまざまな症状を引き起こす病気です。
【椎間板ヘルニアの症状】
・ 頸椎椎間板ヘルニア:肩・腕・背中・足の痛みやしびれ、筋肉の萎縮、けいれん、知覚障害、歩行障害など
・ 腰椎椎間板ヘルニア:腰の痛み、歩行障害、足の麻痺など
(2-3)骨折
「骨折」とは、外から力が加わることで、骨が壊れることをいいます。
骨が折れるだけでなく、骨にヒビが入ること、骨の一部が欠けること、骨が凹んでしまうことも、骨折といいます。
【骨折により生じうる症状】
骨折で周辺の神経が傷つけられることによって起こる痛みやしびれなど
(2-4)靭帯損傷
「靭帯(じんたい)」とは、骨と骨の連結部(関節)で骨どうしをつなげている組織です。
靭帯は、ある程度伸びたり縮んだりすることができますが、外から大きな力が加わることによって、伸び切ってしまったり、断裂したりすることがあるのです。このことを「靭帯損傷」といいます。
【ひざの靭帯損傷の症状】
ひざの痛みや動かしづらさ、さらにひざがぐらつくなどの不安定な感覚が残るなど
また、歩行などひざを動かす際には装具の装着が必要になるケースもあります。
(2-5)TFCC損傷
「TFCC(三角繊維軟骨複合体)」とは、手首の小指側にある2つの骨(橈骨と尺骨)を結ぶ三角の形状をした組織のことです。
TFCCは、手首の小指側に安定性・支持性を与えると同時に、手首をひねったり、ねじったり、力が加わったときに、力の伝達、分散、吸収などを行っています。
【TFCC損傷の症状】
・手首をひねったり、手首を小指側に曲げたりした際に生じる、手首の小指側の痛み
・手首の腫れ
・可動域が制限される
・手の力が抜ける など
後遺障害等級による内容(症状)の違い
身体に痛みや麻痺、しびれなどが残る場合には、後遺障害12級13号のほかに、14級9号に認定される場合があります。
ここでは、それぞれの後遺障害等級の違いについて説明します。
12級13号と14級9号の違い
後遺障害12級13号と後遺障害14級9号の違いは、次のとおりです。
<各等級とその内容>
後遺障害等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
第12級13号 | 局部にがん固な神経症状を残すもの ⇒身体のある部分にレントゲンやMRIなど画像所見(他覚的所見)が認められる神経症状(痛みやしびれなど)があるもの |
第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの ⇒レントゲンやMRIなどの画像所見(他覚的所見)は認められないものの、身体のある部分に医学的に一応の説明がつく神経症状(痛みやしびれなど)があるもの |
両者の違いは、基本的には他覚的所見の有無です。
後遺障害12級・14級の後遺症慰謝料の相場
ここでは、後遺症慰謝料の3つの基準と、後遺障害の等級による後遺症慰謝料の相場の違いについて説明します。
(1)後遺症慰謝料の3つの基準
後遺症慰謝料には3つの基準があり、どの基準を使うかによって慰謝料の金額が大きく変わってくることがあります。
たとえば後遺障害12級の場合、使用する基準によって後遺症慰謝料の額が196万円程度違ってくる可能性があります。
・ 自賠責保険基準:自賠責保険により定められている基準
・ 任意保険基準:各保険会社が定めている独自の基準
・ 弁護士基準(裁判所基準):これまでの裁判所の判断の積み重ねにより認められてきた賠償額を目安とする基準
3つの基準の慰謝料額のイメージを比較すると、一般的に、次のようになります(※)。
※ ただし、自賠責保険は、70%未満の過失については減額対象にしないため、被害者側にも一定の過失がある場合などには、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります。
このように、基本的に、自賠責保険基準や任意保険基準よりも弁護士基準(裁判所基準)のほうが高額となりやすい傾向があります。
(2)後遺障害12級の後遺症慰謝料の相場
後遺障害12級の後遺症慰謝料の相場は次のとおりです。
ただし、2020年4月1日以降に発生した事故であり、被害者側に過失がない場合を前提としています。
<各基準と相場>
算定基準 | 後遺症慰謝料の相場 |
---|---|
自賠責の基準 | 94万円 |
弁護士の基準 | 290万円 |
※任意保険基準は基本的に公開されていないため、省略。
(3)後遺障害14級の後遺症慰謝料の相場
後遺障害14級の後遺症慰謝料の相場は次のとおりです。
ただし、2020年4月1日以降に発生した事故であり、被害者側に過失がない場合を前提としています。
<各基準と相場>
算定基準 | 後遺症慰謝料の相場 |
---|---|
自賠責の基準 | 32万円 |
弁護士の基準 | 110万円 |
※任意保険基準は基本的に公開されていないため、省略。
ご覧のとおり、後遺障害12級13号と後遺障害14級9号では、後遺症慰謝料だけを見ても、金額に大きな違いがあることがわかります。
両者の違いは基本的に他覚的所見の有無ですが、治療経過などによっては見落とされてしまうかもしれません。
交通事故直後から痛みなどがあれば医師にきちんと伝え、可能であれば精密検査を受けるようにしましょう。
後遺障害等級による逸失利益の違い
ここでは、逸失利益の概要と、後遺障害等級による逸失利益の違いについて説明します。
(1)逸失利益とは?
後遺症があるために失った、被害者の方が将来にわたって得られるはずであった利益のことを「後遺症による逸失利益」といいます。
たとえば、交通事故被害者が調理師をしていて、交通事故で手指が動かしづらくなった結果、調理師として働けなくなったとします。
この場合、交通事故がなければ調理師として働き収入を得ていたはずです。
しかし、交通事故で後遺症が残った結果、それらの収入を得られなくなってしまいました。
その減った収入分を「逸失利益」として請求できます。
(2)逸失利益の計算方法
後遺症による逸失利益の計算方法は次のとおりです。
後遺症による逸失利益
=【基礎収入】×【労働能力喪失率(※1)】×【労働能力喪失期間に対応したライプニッツ係数(※2)】
※1労働能力喪失率:後遺症により労働能力が失われた割合
※2ライプニッツ係数:利息などを控除するための数値
ちなみに、後遺障害12級の労働能力喪失率は14%、後遺障害14級の労働能力喪失率は5%です。
計算方法については「後遺症による逸失利益」もご覧ください。
賠償金請求を弁護士に依頼する3つのメリット
交通事故の賠償金請求を弁護士に依頼するメリットとしては、次の3つが挙げられます。
- 慰謝料の増額が期待できる
- 賠償金の請求漏れを防ぐことができる
- 示談交渉などを任せられる
(1)慰謝料の増額が期待できる
保険会社から提示される慰謝料額は、任意保険の基準に基づいて計算されていることが一般的です。
しかし、被害者に代わって弁護士が示談交渉や裁判を行う場合、通常もっとも金額が高くなる弁護士基準(裁判所基準)に基づいて金額を算定し、交渉します。
そのため、弁護士に依頼することで、受け取れる慰謝料が弁護士の基準またはそれに近い金額に増額できる可能性が高まります。
(2)賠償金の請求漏れを防ぐことができる
弁護士に依頼することで賠償金の請求漏れを防ぐことができます。
たとえば、主婦であってもケガの後遺症で家事ができなくなった場合には、「逸失利益」を請求できる場合があります。
しかし、保険会社によっては主婦の逸失利益を認めないケースもあるのです。
このような場合に、保険会社の提示額を鵜呑みにしてしまうと、本来請求できるはずの逸失利益を受け取れません。
弁護士に保険会社の提示額やその内訳をチェックしてもらうことで、本来受け取れるはずの賠償金を受け取れなくなってしまう事態を防ぐことが期待できます。
(3)示談交渉などを任せられる
弁護士に示談交渉を依頼すれば、被害者やその家族が保険会社と直接やり取りする必要は基本的にありません。
示談交渉には、法的知識が必要な場合が多いだけでなく、精神的負担が伴います。特にケガにより肉体的な負担がある状態であればなおさらでしょう。
そのため、弁護士に依頼すれば、賠償金請求に伴う精神的・肉体的負担をかなり軽減できるでしょう。
詳しくは「交通事故の交渉を弁護士に依頼するメリット」もご覧ください。
【まとめ】後遺障害12級13号は、「局部にがん固な神経症状を残すもの」
後遺障害12級13号は、「局部にがん固な神経症状を残すもの」とされており、同じ神経症状である14級9号は「局部に神経症状を残すもの」とされています。
両者の違いは基本的に他覚的所見の有無ですが、治療経過などによっては見落とされてしまう可能性もあるため、医師だけでなく、必要な検査などについて弁護士のアドバイスも受けておくとよいでしょう。
また、慰謝料の金額を算定する基準は1つではないため、弁護士が使用する弁護士基準(裁判所基準)で交渉すれば、受け取れる慰謝料の増額が期待できます。
弁護士に依頼しても、弁護士費用特約などを利用すれば、弁護士費用がかからずに済むケースもあるため、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
交通事故の被害にあい、賠償金請求のことでお悩みの場合は、アディーレ法律事務所にご相談ください。
弁護士は敷居が高く,相談するのは気後れすると感じられている方も多いのではないでしょうか。私もそのようなイメージを抱いていました。しかし,そのようなことはありません。弁護士は皆,困った方々の手助けをしたいと考えております。弁護士に相談することが紛争解決のための第一歩です。ぜひ気軽に弁護士に相談してみてください。私も弁護士として皆さまのお悩みの解決のために全力を尽くします。